薬物犯罪の刑事事件の傾向

薬物犯罪を刑事事件として取り扱うということは、昨今の事情に鑑みて適切ではないという議論が盛ん

薬物

有名人が薬物で逮捕されたなどのニュースがよく報道されますが、近年、薬物犯罪に対する見方は大きく変わってきています。すなわち、そもそもそれを犯罪と見做すかどうか、という大きな問題です。
もちろん、薬物に手を出せば警察に捕まります。刑法上のれっきとした罪であり、刑事事件として処理されるでしょう。
しかし、すべての薬物犯罪を刑事事件として取り扱うということは、昨今の事情に鑑みて適切ではないという議論が盛んになっているのです。

薬物にかかわる犯罪は再犯率が非常に高く、犯罪というより病気に近い性質を持つものだと認識され始めている

薬物というのは、非常に高い中毒性を持つ代物です。一度それに手を出すと、わかっていてもやめられないという人が後を絶ちません。したがって、薬物にかかわる犯罪は再犯率が非常に高く、何度も警察のお世話になるという人も少なくありません。
つまりそれは、もはや犯罪というより病気に近い性質を持つものだと認識され始めているのです。病気であるからには治療の必要が生じてきますが、現行の刑法では懲役刑によって刑事罰を与えることに重きが置かれているため、薬物事案の受刑者は服役中に治療をすることができず、また再犯防止プログラムなどの更生プログラムを受けることも難しくなっています。

薬物の自己使用者を犯罪の被害者だと考える意識が高まることによって、罰だけでなく薬物から身をすすぐサポートに変わっていく

もちろん、すべての薬物犯罪について、こうした認識が広まっているわけではありません。とりわけ悪質な薬物の譲渡、売買などといった薬物の頒布を目的とした犯罪行為は重大な罪であり、断じて許されるものではありません。
しかし殊に薬物の自己使用については、むしろ薬物に関する犯罪の被害者だと見なす認識は、決してこれら犯罪の実情から乖離するものではなく、むしろそうみなすことに大きな意義があるとさえ考えられるのです。
前述の通り、薬物の使用は強い中毒性を持つため、自分の力一人ではそこから抜け出すことは至難の業です。薬物の自己使用に関してはむしろ犯罪の被害者だという観念の広がりは、そうした苦しんでいる人を助け、そこから脱却させることに大きく貢献するはずです。
これまではただ懲役刑などによって刑事罰を与えるに終始していたものが、薬物の自己使用者を犯罪の被害者だと考える意識が高まることによって、ただ罰を与えるだけでなく罪もとい薬物から身をすすぐサポートに変わっていくようになるかもしれないのです。
そうすることによって、たとえ一度は薬物に手を出したとしても、再び立ち直って社会復帰することができる社会体制を整えることにもつながるはずです。